ひとつ、屋根の下で

……瀬野くんが言っていた、私が凌に返せるもの。


一言だけでいいなんて言っていたけれど、瀬野くんが凌が私のことを好きだと思っているのなら、そんなの。


そんなの、分かりきっている。



でも……。



「……それが難しいんだってば……」


家に着いて、部屋に戻ってベッドに身体を沈めながら、思わず呟いた。



だって。


やっぱり私には、仕事のため、は「好きになるな」という意味にしか思えないもん。


凌が私のことを好きだなんて……、思えないんだもん。



……でも、その一方で、瀬野くんが言っていたことはどれも的を射ていたとも思う。


凌が私のことを好き、ということ以外は。


< 316 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop