ひとつ、屋根の下で
……瀬野くんが言っていた、私が凌に返せるもの。
一言だけでいいなんて言っていたけれど、瀬野くんが凌が私のことを好きだと思っているのなら、そんなの。
そんなの、分かりきっている。
でも……。
「……それが難しいんだってば……」
家に着いて、部屋に戻ってベッドに身体を沈めながら、思わず呟いた。
だって。
やっぱり私には、仕事のため、は「好きになるな」という意味にしか思えないもん。
凌が私のことを好きだなんて……、思えないんだもん。
……でも、その一方で、瀬野くんが言っていたことはどれも的を射ていたとも思う。
凌が私のことを好き、ということ以外は。