ひとつ、屋根の下で
……私はたしかに今までずっと、言葉足らずだった。
仕事のため、の言葉の意味。
凌の優しさの理由。
……訊いたら凌は、今まで私が思っていたものとは違う答えをくれる?
「たまには自分から動け……か」
すごく胸に刺さったけれど、今、私に必要なのは、まぎれもなくその言葉だった。
「……うん」
自分の中で決めつけるのはもうやめよう。
私は、ベッドから勢いよく身体を起こした。
回りくどい言葉なんかで、もう逃げたりしない。
憶測で諦めたりなんかしない。
いつまでも、過去の傷痕を見つめるのはやめよう。
今好きな人は決して、好きになってはいけない人、ではないのだから。
私は決意を固めて自分の部屋を出ると、すぐ向かいの凌の部屋のドアをノックしたのだった。