ひとつ、屋根の下で
凌の部屋をノックして、ドアを開けた。
「……あれ」
意気込んで入ったのに、部屋は空っぽだった。
そういえば、さっき階段を下りていく足音がした。
お風呂にでも入ってるのかな。
私は、なんとなしに凌の部屋をぐるりと見回した。
いつも凌といる場所。
だからなのか、ひとりでそこに立っているとまるでいつもと違う場所のような不思議な感覚だった。
……いないなら、とりあえず部屋に戻ろう。
そう思って、くるりと方向転換をしたとき。
ふと、ベッドの上に置きっぱなしになっていた一冊の本が目に入った。
いつも凌の書く漫画が載る雑誌より一回り小さいサイズで、その割に結構厚い。
なんとなしに、その本に手を伸ばした。