ひとつ、屋根の下で
「……え……?」
首筋にあった瀬野くんの手が、頭の後ろに回った。
不意に近づいてくる瀬野くんの整った顔に混乱して、自分がちゃんと息をしているのかも分からなくなっていた。
なに?
なにが、起こってるの……?
抵抗する術も忘れてしまったかのように、私はただ呆然としていた。
引き寄せられるがままに、近づく吐息を受け入れていた。
互いの唇が触れる、……そう思った瞬間。
「……っざけんなよ!!」
バンッ、といきなり背後で大きな音と声がして、身体が後ろに力強く引かれた。
「え……?」
「何してんだよ!!沙波、早く降りろ!」
「え、あの」
「お前、ふざけんな!!コイツに手ぇ出してんじゃねーよ!!」
私を無理やり車から降ろし、車内の瀬野くんに向かって叫んだ。