ひとつ、屋根の下で

熱っぽい視線で見つめられれば、それだけで威圧感を覚えて、何も言えなくなる。


「……仕事のためだって言ったのは、沙波のためにはそう言わなきゃだめだと思ったから」


「え」


「……理由もなく触ったら、沙波、困るだろ……」



眉を顰めつつもまっすぐな視線で、凌はそう言う。



「……え?」



理由もなく触ったら、私が困る……?



「え、それって……」



私に触ることに、本当は理由なんかなかったの?



……触りたいから。


……抱きしめたいから。



私たちが触れ合ってきた本当の理由は、そんな単純で簡単なことだって、思っていいの?


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