ひとつ、屋根の下で
「凌……」
「……悪い……。寝る」
私の手を掴んでいた手を離して、凌は緩慢な動作で立ちあがった。
「わっ!?」
少しぐらついた凌の身体を、慌てて支える。
そうだよ、今は話なんかしている場合じゃない。
「部屋、戻ろう」
「……沙波、傷付けてごめん」
「……傷付いてないよ。……今ので、全部、治っちゃった」
ふわりと、思わず微笑みが零れた。
……瀬野くんの言うとおりだったね。
私たち、きっと言葉足らずだった。
こんなに近くにいるのに。
こんなに一緒にいるのに。