ひとつ、屋根の下で
「沙波っ!」
呼ばれて振り返ると、こちらに駆けてくる千依が見えて、私は教室に向かっていた足を止めた。
「千依。おはよ!」
「おはよー!今年も同じクラスだね!分かってたけど!」
駆け寄ってきた千依が、機嫌良くそう言って、笑った。
そりゃあ、千依が芸能科トップのAクラスから落ちることなんてあるわけないしね!
クラスが分かれるとしたら、私がBクラスに落ちる道しかない。
でも、なんとか今年も無事千依と同じ、Aクラスに進級できた。
……もしかしたら、去年の冬くらいからオーディションに受かり始めたのを評価してもらえたのかもしれない。
まだ、そんなに大きなオーディションは通ってないけれど。
でも、少しずつ手ごたえを感じ始めているんだ。