ひとつ、屋根の下で
「……ん?沙波、ケータイ光ってるよ」
「え、本当だ」
教室について、私がポケットから机に出したケータイを見て言った千依の言葉にケータイを見れば、ディスプレイにはお世話になっている事務所の人の名前が出ていた。
「もしもし」
『やった!!沙波、やったよ!!』
「え」
『おめでとう!!』
ケータイを耳から離さないとその勢いに鼓膜の危機を覚えるほど興奮した声。
だけど、「おめでとう」の言葉に、思わず離しかけた耳を思い切りケータイに押し付けていた。
『この前受けたオーディション!沙波が一番やりたいって言ってた映画のヒロイン、決まったよ!!』
耳に入った、その言葉に、思わずぽかんとした。
……え?
「え……」
『本当に、おめでとう!!これから忙しくなるよー!覚悟しててね』
ピッと、一方的に電話が切られて、だけど私はそのケータイを握り締めたまま、思考が固まってしまった。
「……沙波!」