ひとつ、屋根の下で


でも。


最近は、そんなの全然感じない。


邪魔な物は、もうなにもない。



……毎日のように、凌の前で笑ったり、泣いたり。


恥ずかしいセリフに赤面して、素直になれずに怒ったふりをして。


凌の漫画を手伝うこと。


毎日毎日、凌の前で演じること。


それは私にとって、不思議なくらい自然に私の邪魔をしていた壁を壊してくれたんだ。



「……結局、あいつか」


「ん?」


「なんでもない。映画、撮影頑張りなよ」



「うん。……瀬野くん、ありがとう」



「俺何もしてないけど」



「してなくないよ!……瀬野くんが私のこと叱ってくれなかったら私、いつまでもあのままだったと思うから」


あのまま。

凌の優しさに甘えて。

いつまでもぬるま湯につかったままだったと思うから。


< 361 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop