ひとつ、屋根の下で
でも。
最近は、そんなの全然感じない。
邪魔な物は、もうなにもない。
……毎日のように、凌の前で笑ったり、泣いたり。
恥ずかしいセリフに赤面して、素直になれずに怒ったふりをして。
凌の漫画を手伝うこと。
毎日毎日、凌の前で演じること。
それは私にとって、不思議なくらい自然に私の邪魔をしていた壁を壊してくれたんだ。
「……結局、あいつか」
「ん?」
「なんでもない。映画、撮影頑張りなよ」
「うん。……瀬野くん、ありがとう」
「俺何もしてないけど」
「してなくないよ!……瀬野くんが私のこと叱ってくれなかったら私、いつまでもあのままだったと思うから」
あのまま。
凌の優しさに甘えて。
いつまでもぬるま湯につかったままだったと思うから。