ひとつ、屋根の下で


「ありがとう」



瀬野くん。


私、少しは成長できたよね?


もう、凌に寄り掛からないでまっすぐ立ててるって、思ってもいいかな?




「いつか、瀬野くんが撮った写真、見てみたいな」



私は最後ににっこり笑顔を向け、スタジオを後にした。





だから。




「……瑞貴、よかったのか?」


「なんのことですか」


「……沙波ちゃんのこと、好きなんじゃ」


「さっきので、充分です」


「え」


「ありがとうって言葉。俺の写真、見たいって言葉。

……なんか、あいつへの想いがふっきれるくらい、嬉しかったんで」


「……ごめん瑞貴、おまえの思考俺には難しすぎるみたい」


困ったような表情の北岡さんに、ふっと笑って。



「もうとっくに諦めついてるんで、いいってことですよ」



瀬野くんらしい、まっすぐな声でそう言ったことなんて、私はきっと一生知らないままなんだろう。





それでも、たくさんの想いが重なって私の恋が進んでるってこと。


きっと私は理屈とは違うところで感じていたと思うんだ。




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