ひとつ、屋根の下で


「……うん。この前受けたオーディション、合格したんだ」


パタン、とドアを閉めて、ベッドに座る凌の前に立った。


ケータイから顔を上げた凌が、ふわりと微笑んだ。



「……おめでとう、沙波」



……深い、深い優しい声。


それは、私の心に大きく響いた。




「ありがとう……」



凌のおかげだよ。


凌がいてくれたから、頑張れたんだよ。


そんな気持ちを込めて、笑顔を浮かべた。



「……沙波、変わったな」


「え?」


訊き返すと、凌は目元を柔らかく細めて、優しく笑う。


< 366 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop