ひとつ、屋根の下で
「強くなった。……ちょっと、焦るくらい」
「焦る……?」
「焦るよ。俺は何も変わっていないのに、沙波はどんどん進んでいくから。
沙波に触れられなくなって、一緒にいる時間が減って、それがどれだけ俺にとって大きい変化だったかなんて、沙波にはわからないだろうけど」
凌はそう言うと、ベッドから立ち上がった。
そして、机の引き出しから紙の束を取り出すと、一瞬逡巡するように視線を伏せてから、意を決したように私を見て、それを差し出してきた。
「何……?」
その紙を受け取り、凌を見る。
すると、凌は視線を斜め下にばっと下げてしまった。
……何?
「……読んで」
「え……」
「いいから。読んで」
強く凌に言われ、私はその紙の束に視線を落とした。
1枚目をめくると、鉛筆でかかれただけの漫画があらわれる。
……久しぶりに見た、凌の素の絵。
雑誌に載っているような完成した状態じゃなくて、思うがままにかいただけの、だけどいちばん凌の想いが詰まった原稿。
「……これって……」