ひとつ、屋根の下で
はじめのコマに出てきたのは、私の高校とそっくりな制服を着た女の子。
甘い雰囲気の顔立ちに、ふわりと空気を含んだ髪。
「うん。……沙波だよ」
どこか照れたような、緊張したような、そんな声で凌が言った。
……もしかして、私が凌と出会ってからのことを、描いてくれたの……?
「……沙波はもしかしたらもう見たくない過去かもしれないけど……」
「ううん。……ううん、凌が私のことをかいてくれるなんて嬉しい……」
「……沙波、漫画の手伝いできないって言ってから、本当に一度も俺の部屋に入ったりしなかっただろ?
だからさ、決めてたんだ。次に沙波がここに来たとき、見てもらおうって。
沙波にとってはつらい時間でも、その苦しみを俺の前では涙にしてくれたこと、本当に嬉しかったから」
凌の言葉になんだか泣きそうになりながら、私は手元の漫画から目が離せなかった。
凌の目には、こんなふうに映ってたの?
どうしようもないくらい情けなくて最低な、私と先輩の恋のおわり。
そのつらさに、痛みに、どうしようもなくなってたときも、そして立ち直ってまた笑えるようになってからも。
凌の漫画の中の私は、すごく綺麗な表情をしていた。
……本当に、こんなに綺麗にいられたらいいのに。