ひとつ、屋根の下で


こうして凌の手で描かれた私の時間。


つらくて、苦しくて。


だけど、そんな壊れそうに傷付いた私を支えてくれたのは、まぎれもなく凌の優しさだった。


……漫画の中の凌の考えてることはきっと、凌が本当に思ってくれていたことなんだろう。


先輩に振られて、千依に絶交されて、屋上で泣いた私を抱きしめてくれたとき。


北岡さんに、正体を隠したまま写真を撮られて、恐怖に震える私を迎えに来てくれたとき。


漫画の手伝い、そんな名目で抱きしめられた毎日。



……凌はいつだって、本当に私のことを考えてくれていたんだって、思い知って。


嬉しくて嬉しくて、泣きたくなった。




最後のページをめくる。


そこは、真っ白いままだった。



その前のページに描かれた最後のコマは、真剣な顔をした凌。


『言いたいことがあるんだ』



そのセリフで、終わっている。


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