ひとつ、屋根の下で
「……凌。呼んでくれるのは嬉しいけど、答えはくれないの?」
「……そんなの、分かってるだろ」
抱きしめたまま、照れたようにそう言う凌。
「そんなこと言わないで。言葉にしてよ。……私、本当に凌のことが好きなの。もう間違えたくない。すれ違いたくないの。だから」
好きって言ってよ。
そう言うはずだった唇は、唐突に柔らかい温かさに塞がれていた。
「ん……っ」
いきなりのキスに、頭が真っ白になった。
信じられないくらい幸せで。
信じられないくらい、心が満たされていて。
気付いたら、涙が頬を伝っていた。
瞳が涙にぬれて溢れても、零れないように頑張っていたのに。
もう、自分ではどうしようもないくらい。
ぬぐいきれないほどに、後から後から涙がこぼれ落ちてくる。