ひとつ、屋根の下で
「……また泣いてんのか」
唇が離れただけの至近距離で、苦笑交じりに凌が言った。
「だ、だって。……だって」
「泣き虫なのは相変わらずだな」
「凌が泣かせたんでしょ……!」
それに、この涙は痛いから流れるものじゃなくて。
幸せすぎるせいなんだから。
「怒るなよ。誰も悪いなんて言ってないだろ。
……泣き虫なとこも、好きだよ。
何度だって、沙波の涙は俺が拭ってやるから。
……だから、ずっと俺から離れんなよ」
ふいに、私を捕えた凌の瞳が、ふわり、笑みに細められた。
「愛してる」
温かい声。
じんわりと、心に沁み渡って。
また、涙が零れた。