ひとつ、屋根の下で
「ちょ……っ!」
思い切り顔に掛かったサラサラの長い茶髪を掻き分けて、キッと凌くんを睨む。
そんな乱暴に扱わないでよ!
そう意味を込めた視線も、凌くんには全く効いていないようであははと笑われる。
「もう!!」
ぽかっと凌くんの肩口を叩くと、逆にその手を掴まれた。
びっくりして凌くんを見上げれば、にやりと笑われる。
「……少しは莉帆(りほ)も希美を見習って女らしくしろよ」
凌くんの言葉に、私は一瞬言葉を失った。
莉帆。
今度は長いサラサラの髪がトレードマークで、主人公の幼なじみ設定の三角関係のもうひとりの女の子の名前だ。
ずっと主人公のことが好きだけど、なかなか素直になれない。
そんな、女の子────。
「……っ!
う、うるさいっ!!あんたにそんなこと言われる筋合いないから!!」
好きな人に触られて、カッと顔を赤くしつつも、そんな仕草を見られたくなくてサッと顔を背けた。
「……ホント、希美とは比べものになんねーな」