ひとつ、屋根の下で
呆れたようにそう言い、掴んだ手を離した凌くんに、顔を歪めた。
キュッと唇を結ぶ。
今何かを言ったら泣いてしまいそうだったから。
嗚咽が漏れてしまいそうだったから。
「……ほんっと馬鹿!!アホ!!あんたなんかもう知らないーーっ!!」
涙声まじりにそう叫ぶと、ぎょっとしたような顔をされる。
「え、ちょっとストップストップ!……泣いてんの?」
凌くんは私の手首を掴んで、俯いた私の顔を覗き込んでくる。
しかし、演技の終了に私はあっさり顔を上げた。
「……泣いてないけど」
私が意識したのは、泣きそう、な莉帆であって、泣いてる莉帆じゃない。
そんな簡単に幼なじみに泣かされるなんて莉帆っぽくないかと思って。
きょとんと凌くんを見た私に、彼は一瞬驚いたように目を瞠り、しかしすぐに大きく息を吐いた。
「びびったーー…。マジで泣いたのかと思った」
「あはは」