ひとつ、屋根の下で
「わ、悪かったね!!ていうか離してっ」
離れようと力を込めれば、逆に強く抱きしめられて逃すまいとされてしまう。
凌くんが、喉を鳴らして笑った。
「嘘だって。結構抱き心地いいって。なんかいい匂いするし」
「……へ、変態!!」
こんな奴にドキドキなんかしたくないのに、鼓動は速度を上げていた。
自分ではどうしようもなく顔が熱くなるし、ていうか身体が熱い。
「……ドキドキしてんの?」
「してないよ!するわけないじゃんっ」
「ふーん?……俺は結構ドキドキしてるけど」
「!?」
凌くんの言葉に、キュンっと胸が鳴った。
「う、嘘でしょ?そんなこと言ってからかおうなんて」
「嘘なんか吐いてどうすんだよ」
即座に否定されて、どうしたらいいのか分からない。