ひとつ、屋根の下で
「し、凌くん、そういうことはあんまり考えなしに言わない方がいいよ」
「凌」
あわあわとした私の言葉とは正反対のピンとした凌くんの声。
「え」
「“くん”とかいらないんだけど」
不機嫌な声。
「わ、わかったよ……」
「ん。じゃあ呼んでみて」
「!?」
どうしてだろう。
どうしてこんなに緊張するんだろう。
「……凌」
囁くほどに小さな声だったけど、なんとか声を絞り出せばギュッと抱きしめる腕に力が込められた。