ひとつ、屋根の下で



「し、凌くん、そういうことはあんまり考えなしに言わない方がいいよ」


「凌」


あわあわとした私の言葉とは正反対のピンとした凌くんの声。


「え」


「“くん”とかいらないんだけど」


不機嫌な声。


「わ、わかったよ……」


「ん。じゃあ呼んでみて」


「!?」



どうしてだろう。


どうしてこんなに緊張するんだろう。



「……凌」


囁くほどに小さな声だったけど、なんとか声を絞り出せばギュッと抱きしめる腕に力が込められた。


< 58 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop