ひとつ、屋根の下で


バタンッ、と自分の部屋に駆けこんでドアを閉めるより前にそんな悲鳴が聞こえてきたけど、もちろん全力で無視した。



なんなの、あの変態!!



演技を褒めてくれて、すごく嬉しかったのに。




「……あんなのとこれから一緒に暮らすの……!?」



憂鬱を通り越して最早自分の身の安全が心配だ。


だけど、そんな相手なのに、変態なのに、抱きしめられてドキドキしてしまった自分が信じられなかった。





……一方的に抱きしめられただけなのに。



私はどちらかと言えば被害者で、あいつに恋愛感情なんて欠片もないのに。



凌の仕事のための、お遊びの、ハグ。




ただ、それだけなのに。



それだけのはずなのに、先輩を裏切ってしまったような気がするのは、どうしてなんだろう────。




< 60 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop