ひとつ、屋根の下で
「おはよー」
ふああ、と欠伸を噛み殺しながら教室に入る。
すると席に座っていた千依が勢いよく振り向いて、すごいスピードで私のもとに駆け寄ってきた。
「沙波!!!」
ガッ、とそのか弱そうな細い腕からは想像もつかない強い力で両肩を掴まれる。
「何ー?どしたの」
ぶんぶんと前後に身体をゆすられながら、なんとかそう訊いた。
「どしたの、じゃないよー!朝一緒に来たの誰!?すっごいカッコよかったよね!?ていうかすっごい綺麗な人だったよね!?」
さすが千依。
顔の綺麗な人には目ざといんだから。
「あれね、うん。なんか下宿先の人?」