ひとつ、屋根の下で
なんてベタな反応なの?
ばっちり見てるんじゃないのよ!
「あ、あのね」
「ヤベ、本鈴鳴る!……じゃーな!」
「ちょ……っ!!」
私が引き止める間もなく、その男子生徒は私から身体を離すと走り去ってしまった。
「……絵の具?」
ふわりと鼻腔をかすめたなんとなく懐かしい匂いに、私は去っていく後ろ姿を呆然と見送りながら、思わずそう呟いていた。
美術部の人なのかな?
それとも、美術の授業でもあったのだろうか。
……って、そんなこと考えてる場合じゃない!