ひとつ、屋根の下で

顔が熱くなるのが抑えられない。


まっすぐ凌の顔を見るなんてできなくて、俯いた。


「わ……っ」



しばしの沈黙の後、グイッと手首を掴まれて。


ぐいぐいと私を引っ張るようにしながら歩き出した凌に、私もなんとか歩き出す。


「帰る」



私の手を引きながら、ポツリと呟いた凌。


その声が、いつもと違う気がして。


後ろから見える、凌の耳が微かに赤い気がして。





「凌ってよくわかんない……」



いつも、漫画のためなら恥ずかしげもなく抱きしめてきたりするくせに。


さっきだって、カメラの前では余裕ある顔してたのに。



なのに。


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