流れ星デイズ
熱気を忘れた早朝の涼しい風の向こうから、黒い輝きを放つ大きなワゴン車が走ってくる。
トワさんっぽいな、と思ったら、案の定それは徐々にスピードを落として私の前で停まった。
いかにも高級です、という出で立ち。
そしてドアが開き、見えたのは左ハンドル。
「おはよう」
降りてきたトワさんに、私は圧倒されながらお辞儀をした。
お店もいっぱい持ってるし、音楽事務所の偉い人とも親しそうだったし。
トワさんって一体、何者なんだろう。……
後部座席に荷物を積んでもらい、私は勧められるまま助手席に座った。
外国車なんて、初めて乗る。
フロントガラスから見えるセンターラインが近い。
「じゃあ、長旅になると思うけど、よろしく」
「こ、こちらこそ、今日はお世話になります、ご迷惑かとは思いますが、よろしくお願いします!」
「そんなに硬くならないでよ。
俺が沙妃ちゃんと話したいと思ったから誘ったんだよ」
「話?」
「別に口説いたりするんじゃないから安心して」
「あ、えっと……はい」
「沙妃ちゃんは、ほんと分かりやすいのな」
ははは、と笑って、トワさんはエンジンをかける。
その余裕を少し分けてほしい、と思った。