流れ星デイズ


「俺がしたかった話っていうのはね……」


トワさんの真剣な横顔に、この耳は澄まされて、手はシャツの裾をギュッと握り締める。


「そうだな。まずは『Sir.juke』が結成したいきさつから話そうか」


私は黙ったままうなずいた。




「もう十年くらい前になるかな。

ショウはね、当時組んでたバンドで、一度メジャーデビューを経験してるんだ」


「メジャーデビュー!……すごい」


「まあ、鳴かず飛ばずで、おまけにたった二年で解散したから、世間的に奴らの音楽はほとんど知られてないけどね」


投げやりな言い方に、寂しくて悔しいのだろう本音がにじんでいるような気がする。


「メンバーが全員十代で、若いから衝突も多かったんだ。

しかも事務所側からは売り上げのためだけの音楽を強要されてね。

ますますメンバーは衝突するし、自由を奪われた音楽はさっぱり売れない。

次第にバンドはバンドとして成り立たなくなっていった。

その中でショウだけは、仲間を信じて、自分達の本来の音楽を信じてた。

散り散りになりそうなメンバーを何とかつなぎ止めて、事務所とも折り合いをつけようと必死だった。

でも……」


そこで大きなカーブに差しかかった。


でも、言葉が途切れたのは、その揺れのせいだけじゃなかった。


カーブが終わっても言葉の続きはなかなかやってこない。


赤信号で停まったのをきっかけに、トワさんは再び口を開いた。




「でも、裏切られた」




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