流れ星デイズ
砕かれた心
太陽は穏やかになり、気づけばもう長袖の季節。
おろしたてのカーディガンを羽織った私は、今夜もトワさんのライブハウスにいた。
緊張することはすっかりなくなったけれど、ライブが特別な時間であることは変わらない。
海の家での経験を経て、『Sir.juke』の演奏にはますます磨きがかかったよう。
圭吾さんの歌声も、前よりおいしくなっている気がする。
いつものように会場の最後尾でライブを堪能し、ステージに手を振った。
そしてトワさんに挨拶をした私は、そのままライブハウスを後にする。
夏、トワさんの話を聞いて決心して以来、誘われても控え室へは行かなくなった。
ショウさんが私のことを認めてくれた分、私も信頼されるような行動を取らなきゃいけない。
圭吾さんのために、音楽の現場での自分の立場をわきまえなきゃいけない、と思うから。
手に入れた、新しい日常。
圭吾さんの声に満たされて、幸せの延長線上を歩いてる。
そんな安心感でいっぱい。
だから、気づけなかった。
空に、星のまたたきを閉ざす厚い雲が忍び寄っていたことを。