流れ星デイズ
湿布を貼って、アザの処置は終わった。
その次に川崎先生は、机の上に放ってあった聴診器をつかんだ。
「一応、心音を診ておくか」
「お願いします」
カットソーの裾をめくると、胸の上に冷え切った金属が宛てがわれた。
皮膚の温度を乱暴に奪いながら、それは移動していく。
そのとき、川崎先生のまつげが微かに揺れたのを、私は見逃さなかった。
「その症状は、一度だけか?」
耳から聴診器を外しながら、川崎先生は尋ねてくる。
「いえ、昨日の他にも、つい最近に一度」
「そうかそうか」
不精ひげの生えたその口元は、一瞬沈黙して。
「まあ、一応。
一応、な」
そして私は、心電図をとることになった。
検査を終え、いつもの部屋に戻ると、すでに川崎先生は検査結果の紙をひらひらさせながら眺めていた。
「おーう、お疲れ」
嫌な予感に押しつぶされないように、私は背筋を伸ばして椅子に腰かけた。
川崎先生は、「んー」と考えごとをしているふうに軽くうなり、そしてあっけらかんと笑った。
「お前、これ何ともなかったぞ。
クラっとしたなんて、そりゃ恋患いか何かじゃないのか?」
からかうような口調だけれど、いつもと違うのは、貧乏揺すりで靴が鳴いているのが聞こえること。
タンタン、タンタン……
この音には聞き覚えがある。
パパが声を失ったと知らされたとき、川崎先生は「冗談だろ?」と頬を引きつらせ、しかしそれが真実だと理解すると、強張った笑みを浮かべながら足をせわしなく動かし始めたのだった。