流れ星デイズ


入ってすぐ右手にはカウンターがあって、私と同じ歳ほどのスタッフらしき男の子がいた。


「いらっしゃいませ。チケットとドリンク代をお願いします」


ドリンク代?


私は首をかしげた。


「あの……飲み物は、いりませんけど……」


すると、そのスタッフさんは笑顔で説明してくれた。


「申し訳ありません。

こういうライブハウスでは大抵の場合、システムとして、チケット代とは別にドリンク代をいただくことになってるんです」


世の中には知らないことがたくさんある。


私は感心しつつ、チケットとドリンク代を差し出した。


返ってきたのは、チケットの半券と、名刺の半分ほどの大きさの黄色いドリンク券。


「中のドリンクバーで、お好きな飲み物と引き換えてくださいね。

では、このまま、まっすぐ進んで入場してください」


親切な彼に軽く会釈をし、促されたように店の奥へ向かう。


その途中、ふと思った。




そういえば私、何も飲めない。




複雑な思いでドリンク券を見つめる。


捨てようか……でも、もったいない……。




「これも、記念だよね」


そう思い直して、ドリンク券を財布へしまった。

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