流れ星デイズ
しばらくして、圭吾さんはある場所の前で立ち止まった。
その場所が何であるか理解した瞬間、私は血の気が引いていく音を聞いた。
「映画館……」
お目当ては、ブロードウェイミュージカルを映画化した話題作のよう。
「大人二枚」
たじろいでいる間に、圭吾さんはチケットの購入を済ませてしまった。
「あ、お金……」
「いいよ、俺が誘ったんだし」
強引に押し切られて、私の前に一枚、チケットが差し出される。
「……ありがとう、ございます」
私はそれを、受け取るしかなかった。
気持ちは嬉しい。
でも、映画は苦手。
だって録音された声は、一度食べてしまうと、そこだけ空白になってしまう。
男性ボーカリストのCDなら、カラオケみたいに。
映画なら、男性キャストだけ吹き替えが終わっていないみたいに。
食べた部分が抜け落ちてしまうのだ。
しかも、それは本物と違って舌に触れただけで溶けてなくなってしまうくらい量が少ないから、気を抜いたらあっという間に音源を駄目にしてしまう。
そうならないよう、絶対に口は閉じておかないと。……