流れ星デイズ
トワさんから裏口を教えてもらって外に出ると、雨は上がっていた。
見上げると、久しぶりに見た雲一つない夜空。
夕立に冷やされた空気が、クローゼットの奥にしまいこんだ長袖を恋しくさせる。
思わず身震いしていたら、エンジン音が近づいてきて、黒くて四角い軽が目の前で停車した。
ドアが開いて、運転席から助手席に身を乗り出している圭吾さんが顔を出す。
「乗って」
「はい、お邪魔します……」
ぎこちなく乗りこむと、芳香剤の涼しげな香りに混じって圭吾さんの汗の匂いがした。
初めて体験する、男の人の匂い。
不思議な感じだけど、決して不快じゃない。
「とりあえず聖地まで行くから、そこからの道は教えて」
狭い空間で、声がこもる。
食べたくなくても、食べてしまう。
「聖地までで充分ですから……」
「いや、家まで送る」
「でも……」
「いいから」
エンジンがうなって、車が走り出した。
優しくされると、恐くなる。
何をしても許されるわけじゃないのに、勘違いしてしまいそうになるから。