流れ星デイズ
なんとか気持ちを整理して、テストを終えた。
聖地の中、傘を差して、靴の先を濡らして、私は家路を急ぐ。
とにかく疲れた体を早く休めたかった。
それなのに綾乃は、テストを楽々とこなして、元気にバンドの練習へ行った。
綾乃がうらやましい。
あふれるバイタリティはもちろんだけど、圭吾さんに会えることが、うらやましかった。
練習の度に、あの歌声が聴けるんだ。
ステージも客席もない、特別な距離で。
こんな雨じゃ、いつもあんなにあふれているストリートミュージシャンの姿は見つけられない。
今日の夕食には、ありつけそうにない。
ちょうど噴水池へと差しかかる。
映画館に行った日、圭吾さんが指差していた建物を、あのときと同じ場所から眺めてみた。
スタジオの窓から彼が顔をのぞかせていないか、期待してしまう。
でも期待はいつまでも期待のままで、報われることはなく、寂しさだけが募った。
あのとき言ってた「髪の長い女の子」って、私のことなのかな。
そう思って、いいのかな。
嬉しいのに苦しくて、そして恐くなる。
どうしてこんな気持ちになるんだろう。
分からないけれど、今までのように閉じこもっていたいとは思わない。
ただ、圭吾さんに会いたい。