流れ星デイズ


それからママは私を鏡台の前に座らせ、ヘアアイロンを持ち出してきて、この長い髪を器用に巻き始めた。


「そんなことしなくても……」


「いいから、ママに任せなさい!」


されるがままになっていると、みるみるうちに自然なゆるやかウェーブが完成していく。


鏡の中には、初めて見る自分。


「まあ、可愛い!」


大絶賛のママ。


「似合ってるかな……」


「もちろんよ!」


背中で踊るふわふわの髪が、くすぐったい。




「じゃあ、最後の仕上げね」


そう言ってママが取り出したのは、薄桃色にキラキラ透けているガラスの小瓶。


それを宙へ一振りすると、きらめく霧が降ってきた。


ふわり、甘い香りに包まれる。


とっておきのときに、ママが必ず身にまとう香りだ。




すっかり変身してしまった私。


こんなオシャレ、身の丈に合ってるのかな?


「これじゃ、気合いが入りすぎてるように思われちゃうよ」


心配になってつぶやくと。


「いいのよ。沙妃ちゃんは口下手なんだから、こういうところで精一杯アピールしなきゃ」


ねっ!と軽く背中を叩かれた。


それだけで、自信を持っていいような気がする。




髪の毛をくるくるにしたり、勇気をくれたり。


ママの手は魔法みたいって、本気で思った。




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