流れ星デイズ
第六章『あなたの隣』
彼は特別
三回目になると、少しだけれどライブにも慣れてきた。
前みたいに緊張しなくなったし、人混みへの恐怖心もやわらいでいる。
お財布のポケットに、使わなかったドリンク券が増えていくのが嬉しい。
もっと増えればいい、と思う。
今回も一番最後に入場して、会場の後ろの入り口付近を陣取った。
前のほうで興奮に溺れるよりも、後ろで静かに音楽を楽しむほうが、性に合ってる。
それに、ゆっくりと圭吾さんの歌声を食べたい。
そのために今日は、他の誰の声を食べることも我慢してきた。
いけないことだって分かってる。
でも、圭吾さんの声には限りなんてない。
そんな気がしてる。
開演直前に、トワさんを見つけた。
背が高いし、何よりオーラですぐに分かる。
挨拶しようと歩み寄ったら、トワさんは誰かと話していた。
隣には、スーツを着た、トワさんと同年代くらいの男性。
その生真面目な雰囲気は、ライブハウスでは浮いている印象が否めない。
二人はとても真剣に言葉を交わしている。
仕方なく、私は声をかけるのを諦めた。