穢れた愛


それでも
未来ある若者に
偽善的な恋愛を
偽る山越は


心の奥底へ
隠し込んだ本音を
滲ませながら
結婚観を濁らせて
語る


「釣った魚に
 餌を捲き続けるのも
 悪くは ないぞ」


山越の忠告を
見透かした青柳は
僅かばかり鼻で笑い


炭酸の抜けかけた
ビールジョッキの中へ
割り箸を突き立て


小さな気泡が
再浮上をするビールを
眺め


「池の水が 在るだけ
 マシですよ
 魚が泳げる」


青柳の返答が
山越の潜在意識へ
浸透してゆくのは


家族と言う
池の中で
泳ぎ回る妻や子供達に
餌を運べる事が


山越にとって
自己満足的な
快楽のひとつで在る事に
気づいていたからだ


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