穢れた愛


円満な家族のように
澄んだ池では
なくとも


潤った水が
注ぎ込まれた
安泰な池


湯水のように
流れ出るローンが
腐る程 山越の肩に
圧し掛かっていても
潤滑する池がある


「彼女と巧くいってないのか」


山越の下手な勘繰りは
青柳を無表情へ戻し
手離した割り箸が
音もなく静かに傾いた


「同棲してます」


意外な情報に
呆気に取られた山越は
腕時計を確認し


「昨夜も泊り込みだろ
 早く 帰ってやれ」


精魂の抜け落ちた
視線を投掛ける青柳


「山越常務
 池の水とは
 何ですかね」


結局 一滴も飲まず
割り箸の刺さった
ジョッキを残し
立ち上がる青柳は
御礼も告げず


「帰ります」


疑問を解決する事なく
革靴を履き始めた


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