穢れた愛
クライスラー 300C
横瀬の愛車
助手席に乗り込む明美は
後部座席に荷物を投げ
「横瀬さん
御曹司だったりする?」
横瀬は口角を上げ
意味深に笑い
「玉の腰に乗ってみる?」
明美はシートベルトを絞め
「それ いいかも
友達に自慢出来る
でも やめとく
横瀬さんの親と
仲良くする自信ないし
面倒臭そう」
折畳み式の鏡を
覗き込み
前髪を弄る明美
前置きもなく
脳裏で描く想いを
突如 会話にする
女子高生ならではの
主語のない言葉
「でもさ
何で 横瀬さんの友達呼ぶのに
明美の友達も呼ぶ訳?
三人で食事すれば いいじゃん」
ハンドルを握り
前を見続ける横瀬は
不機嫌な顔を作り
「俺が嫌だから
青柳と向き合って
食事するのが」
横瀬の横顔を
鏡越しに見ていた明美は
鏡を閉じた