穢れた愛
絵柄の違う
珈琲カップ
ふたつ
灰皿
ひとつ
向き合って座る
テーブル
機嫌を損ねたまま
煙草を吸う絵里は
珈琲カップの縁を
指先でなぞる
「家庭持ちの男が
休日 逢いに来るのは
結構 大変なんだぜ」
柏崎の言葉に
視線だけを上げる絵里
得意気に笑う柏崎は
珈琲カップを揺らし
「愛を感じるだろ
絵里の為に
危険を犯してでも
逢いに来たんだ」
絵里は傷ついた指先に
視線を戻し
「どうりで
青柳が出掛けてすぐ
来る訳ね」
嫌味掛かった絵里の言葉を
鼻で笑う柏崎は
珈琲を口に含み
「横瀬に頼んだからな
青柳は 昔から
横瀬の金魚の糞だ
逆らえない
上手い事 考えただろ?」
勝ち誇り笑う柏崎の顔を
冷静に眺める絵里は
薬指に嵌められた
シルバーリングに
視線を落とし
柏崎の妻にならなくて
正解だと
笑みを浮かべた