穢れた愛
ヒステリックな
妻の声
20数年
夫婦をして
聞き慣れてしまった
険悪な話し方
茹で過ぎたパスタに
顔を隠し泣いた
微笑ましい妻を
抱き寄せた記憶が
幻と消え
溜息だけが
山越から零れ堕ちる
「職場の電話にまで
掛けてくるなよ」
話の途中で
充電が切れた携帯
「貴方が掛けて
来ないからじゃない」
堂々巡りの
成り立たない会話に
終止符を打つ
「とにかく
警察に連絡するのは
やめなさい」
強い口調で
咎める山越の言葉に
発狂した声が
山越に噛み付く
「夕夏に何かあったら
貴方の責任ですからね
貴方は親として
無責任なのよ」
止まらない妻の
喚き声を聞きながら
明けてゆく空を眺め
”お前は 何処に居たんだ”
妻を咎める言葉を
押し殺した