穢れた愛


テーブルに顔を伏せ
紫色の携帯電話を
振り払う


青柳から掛からない電話を
待ち続けた絵里


夕夏の為に
掛けられた二度の電話


屈辱が絵里を
襲う


愛される資格のない絵里


同棲して二年


一度たりとも
肌に触れない青柳は
”栞”の虜


学生時代から
無関心を貫く青柳の瞳に
映り込んだ”栞”


相手にさえ
されなかった絵里は
社長秘書の資格を取得しながら
働きもせず


男を頼っては
同棲を繰り返し


行く当てを失えば
遊び相手の横瀬と
躰を重ね


”青柳と暮らせば”


交わした契りを
青柳に擦り付ける
薄情な言葉


横瀬の頼みとして
青柳に受け入れられただけの
同居人


愛される資格さえ
”栞”の面影を持つ
夕夏に奪われる敗北感に


絵里は
飲み込まれていた


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