押し掛けジュリエット
タイトル未編集

「佐伯さーん さ・ え・ き さんってば!」

みつあみっ子が狭いビルの階段を降りていく男の背広を引っ張った。


「あんだよっ?俺はこれからモーレツに忙しいんだよっ」


黒髪の目付きのやや鋭い、でも2枚目とか美形には程遠い青年が振り返りながら言った。


「どちらへ?」

切れ長の黒い瞳で少女は訪ねる。


こちらは色白で日本人形のような艶のある髪…細身でバランスのとれた、落ち着いた感じのなかなかの美少女だ。

「東京だよ。出張でな。10日程留守にすっから…」

佐伯と呼ばれる男はしばらく考えるとニヤッと笑ってこう言った。
「とーぜん、その間は事務所は休業。お前も休みだ。すべからくしてバイト代もなし。なんならこのまま辞めてもいーぞ」


勝ち誇ったようにそう言う佐伯に、うむっとみつあみっ子は考えるふりをした


考えるふりであって
考え事をしてるとは限らない


「んじゃな♪」
男は軽やかに手をあげて言った




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