白というイロ。
彼のお見舞いに通うようになって、三週間目。
毎日のように彼の部屋に出向く私を、変に思うことなく。むしろ彼の家族や担任はありがたそうに会う度に微笑まれる。別に何を言うわけではないけれど。...ほら、誤解でもしていないといいなぁ、なんて。
「...誤解?」
「そう、誤解。例えば私が横山くんに好意を持っているとか」
「ほう。いいじゃない」
「おい」
真顔でそんなことを言うものだから、本気で呆れてしまう。いいわけないだろう。
「何で?安部さんが僕に片思いだなんて。結構、気分良いよ」
思春期の女の子を捕まえて、いけしゃあしゃあとよく言えたものだ。まぁ、私も少しくらい動揺するくらいのオプションを付けれれば、可愛いのだろうけど。
生憎そんな面倒なことしたくない。
「片思い、ね。横山くんには一生縁がなさそう」
「失礼な。そんなことないよ」
「...そうなの?」
「そうなの」
初めてこの部屋に来た時よりは、身体も大分動かせるみたいだし。顔や手にあった細かい擦り傷も消えていた。少しむっとしたような彼の顔を眺めながら、ほくそ笑む。恋愛感情なんて大層なものは持ち合わせていないけれど、この人のことを気に入っているのは事実だ。
だから、柄でもないことを思ってしまったのも仕方ない、はず。