白というイロ。



「透、もうすぐ退院出来るらしいの」


珍しく、横山くんの寝顔を見つめながら私は見慣れたパイプ椅子に座っていた。隣には明子さんが居て、優しげに自分と同じ彼の髪を撫でていた。



「いつもありがとね、皐月ちゃん」


「いえ、好きで来ているだけですし」


「...ほんとーーに、好きじゃないの?透のこと」


「...明子さんが思っているようなのじゃ、ないですね。多分」


「...そう、残念。でも妹には絶対皐月ちゃんがいいわ」



そう笑って、私の髪も撫でてくれた。ああ、こんなことならもっと手入れいておけばよかったなぁ。伸ばしっぱなしの漆黒の髪。部屋はペールトーンで揃っているのに、私だけ違和感がある。






「あのね。私ね、もうすぐ結婚するの」



その瞬間。彼女の角度からでは気付かないだろうけど、不自然に彼の身体が僅かに揺れた。



「式は、まだ決めていないんだけど…」


「そ、うなんですか」



ああ、もう。勘の良すぎるのも、考えものだ。


全部が、全部。綺麗に回っていく。












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