サキヨミ。【BL】


――今から数日前。


俺は携帯に向かって必死に訴えていた。


「なあ、頼むからどこか建物に入ってくれないか」

『急いでるんだって。んな暇無いの』


相手はもちろん彼だ。



「君はもうすぐ事故に遭ってしまうんだ」

『またいつものか』



「車に轢かれてしまうんだよ!」

『まさか。急いでても十二分に気を付けてるから』


いくら歩行者が気を付けていたって、どうにもならない時もある。

俺にはその光景が見えてしまったから必死で説得する。



なのに彼はちっとも信じてくれない。

はいはい、と呆れたように笑い、歩き続ける。


< 4 / 10 >

この作品をシェア

pagetop