サキヨミ。【BL】
――今から数日前。
俺は携帯に向かって必死に訴えていた。
「なあ、頼むからどこか建物に入ってくれないか」
『急いでるんだって。んな暇無いの』
相手はもちろん彼だ。
「君はもうすぐ事故に遭ってしまうんだ」
『またいつものか』
「車に轢かれてしまうんだよ!」
『まさか。急いでても十二分に気を付けてるから』
いくら歩行者が気を付けていたって、どうにもならない時もある。
俺にはその光景が見えてしまったから必死で説得する。
なのに彼はちっとも信じてくれない。
はいはい、と呆れたように笑い、歩き続ける。