恋の華が舞う季節
第1章
入学式
「新入生、入場」
毎年馴染み深い入学恒例のBGMが流れだすと共に、私は体育館へと入場した。
今日から中学生になる。
初めて着た制服はあまりも馴染みが無く、何となくソワソワ。
小学生の時は私服だったから、凄く気持ちが新鮮。
おぼつかない足取りで広い体育館を眺め、静まり返っている体育館を人一倍キョロキョロと見渡す。
そんな中、彼はいたんだ。
「すいません、遅れました!!」
いきなり体育館に響いた低い声。
思わずみんな振り返る。
視線の先には静かな体育館内に場違いのように、荒々しい息をもらしながら来た“彼”が居た。
さっきまで走ってきたんだとわかる位、汗が首筋を伝って流れ落ちている。
彼は誰から見ても、“異質”だった。
私だって、この時まではそう思っていたんだ。
一番浴びせられたくない視線を彼は一気に集め、周囲に何食わぬ顔で自分の席へと焦る素振りも見せずゆっくりと席に着く。
先生達も少し取り乱しながらも、平静を装い、何とかその場を逃れ入学式は再開された。