恋の華が舞う季節
私は咄嗟に走り出し、秦のいる3年2組へと、向かった。


私のクラスと、秦のクラスは階が違うので、遠い。


その距離が、なぜだか離れていく、秦との距離に感じて、不安にかられていく。




足が思うように、走れない。


クラスまでの距離が、遠い。


息が苦しい。


段々、呼吸さえもが苦しくなってく。







教室にたどり着いた頃には、首筋から汗が溢れていた。



私は少し、呼吸を整えて、扉を開く。


ちょうどこの時間は、みんな、朝の用意で慌しいせいか、私が来ても、別にちらっと見られるくらいで、そんなに気にかけていない。


そして、秦の姿を見つけると、また走って駆け寄る。



「……蜜柑から、聞いたのか?」


落ち着いた声。


何で、そんなに冷静なの……。


私は不安でしょうがないのに。



「聞いたよ……。何で、教えてくれなかったの……?」



「少し長くなるから、屋上行こう」


「……分かった」



教室から出て、秦は私に手を差し出し、私もそれに応えるかのように、手を繋ぐ。


“恋人繋ぎ”



初めて恋人繋ぎしたのに、こんなにも、辛いなんて、嫌だった。


これから、秦が私に言おうとしている事が、なぜだか妙に、聞きたくない。


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