恋の華が舞う季節
本当に好きな人なら、尚更今度は、私以上に想ってくれる人の下に、渡さなきゃ。


――ポタ……


え?


私は秦を見つめる。


秦は声を出さずに、感情も出さずに、涙を流した。


そんな姿を見た瞬間、私は震えた。





「もう俺達、本当に駄目なのか?」


必死な目。


ここで素直に否定できたなら――どんなに幸せなんだろう。



「うん! 蜜柑と幸せになってね」



秦は踵を返し、そのまま帰ってく。


その姿を見ながら、また涙が溢れた。

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