恋の華が舞う季節
振り返らなくても分かる、この声は……秦。

つかつかと歩き、私の目の前に立った。

あの時と同じ真剣な目。


この目に何度、真っ直ぐさを感じただろう。


「俺は! 諦めないから!! 
 お前からしてみたら、きっかけなんか、どうでもいかもしんねぇ!!

 けど……俺は、お前が守りたいんだ。
 時折見せる表情とか、あの時の涙と歌声とか……。
 全部ひっくるめて、好きなんだよ!!」


「さっきも言ったでしょ? これ以上、私は……」


そう言おうとした瞬間、また唇が触れる。


2度目のキス。



「何も言わなくていい。無理せんでもいいから――!
 俺が好きだから、傍にいて欲しい!!」



――“好きだから、傍にいて……”



「……葵……」


「――結衣?! 何言ってる……」


「葵……なの?」


震える声。


重なる思い出。


そして今。


秦が――葵に見えた。



「あお……い?」
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