恋の華が舞う季節
 適当に本をパラパラと読み、適当に本棚に返す。

 その作業を幾度となく繰り返し、また返す。

 空白の時間が、やけにつまらない。

 こんな暇があるんだったら、君に声を掛けるなんて、たやすい事。


 そんなことが出来ない俺は、小心者?


 結構告られることはあっても、冷たく切り捨ててしまった俺が、こんなにも自分からした恋には上手く伝えることが出来ない。

 本当、この違いは何なんだろう。

 
 苦しい。

 そのなんとも言えない感情が、どんどん積もっていく。


「……その本、読まないんですか?」

「え?」

 俺の隣に居る、君。

 え。

 今、何て言った? 

 ヤバい、驚きで全然覚えてない。

 ちょ……ちょ……、どうしよ。

 軽く混乱中。

「いい話なんです。そのお話。
 私、何回か読んだんですけど、毎回涙するんです」

 そう言って、笑顔を向ける。

 
 例え本についてのことに対して向けられた笑顔でも、今の笑顔は、俺しか見てない。

 
 何か、凄く嬉しい。

 しかも顔が熱いんですけど。

 温度が一気に真夏日。
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