恋の華が舞う季節
 俺の感情は、こんなことで折れてしまうほど、君を想う気持ちはヤワじゃない。



 君に逢って、俺の感情がこんなにあったんだという事に気がついて。

 馬鹿みたいに、落ち込んで。

 また、君の笑顔に立ち上がる勇気を貰った。

 ここで言わないと、一生後悔する。



 俺は、必死で焦る感情を押し殺し、教室に入る。

 幸い誰もいない。

 そう言えば、吹奏楽部は、それぞれのパートに分かれて自教室で練習は行うって誰かが言ってたっけ。

 て、そんなのどうだっていいんだけど。


「あ……」

「あの」


 言葉が同時に重なった。

「ど、どうぞ」

「いえ、大したことないんで」

「いや……、何か気になるんで、どうぞ」

「あ、じゃあ……。
 私知りたいことがあるんです」

「え?」

「何でいつも、図書館で本を数ページ読んだだけで、すぐ返すんですか?」

 え。

 そう言われても……俺は……本が目的じゃないから。


“君が居るから”

 そう言いたくても、言葉には出せなかった。


「陸……先輩」

「え?」

「ですよね? 名前」

「何で……」

「さっきお昼休みに貸し出しカードに書いた名前、こっそり見ちゃいました」

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